、青年の気持を理解しないで、その行動を批判し、徒らに青年の自尊心を傷つけ、士気を沈滞せしめるやうな結果を招くこともありがちであります。
 しかしながら、それは青年の一部に、たしかに、自ら青年の矜りを失つたやうなものが存在するからだといふことを、はつきり青年の側で認める必要があります。
 尤も世間といふものは、必ずしも聡明なものばかりの集りではない。なかには、ものの値打がほんたうにわからない手合がゐるものです。青年を指して、「若造」とか「弱輩」とか、甚だしきは「青二才」とか呼ぶ、あの名称は、たしかに青年を軽く扱つたもので、青年の未熟な、単純な一面を強く指摘して、その発言権を奪はうといふ老獪な保守的思想が生み出したものであります。
 とは云へ、一方、青年自身としては、青年の分限といふものを心得、先輩長老を立て、自ら「弱輩」として未だ足らざるところ多きを率直に告白する謙虚さがなくてはなりません。しかも、この謙虚さによつて、はじめて真の矜りが保たれるのだといふことを、深く肝に銘じておくべきです。

 日本の青年は、日本の青年としての誇りをもたなくてはならぬ。それなら、その矜りは、如何なるかたち
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