で現されるか。矜りが矜りとして青年一人一人の身につき、それが、立派に日本青年のすがたとなるためには、どういふ風にすればいいか。それがこれからの問題です。

[#7字下げ]四[#「四」は中見出し]

 この問題の答へは、私の考へでは、至極簡単であります。
 曰く、日本の青年としての「嗜《たしな》み」を完全に、どこまでも、自分のものとする、これだけであります。
 それは、言ひ換へれば、日本人としての「嗜み」を、青年時代から、それぞれの立場でしつかり身につけるやうに修業するといふことに外ならぬのです。

[#7字下げ]五[#「五」は中見出し]

「たしなみ」といふ言葉は、日本語として非常にいゝ言葉であります。最も日本語らしい日本語、落ちついて、含みがあつて、音も美しく、直観の鋭さにみちてゐます。
「たしなむ」といふ動詞から来たものに違ひありませんが、「たしなむ」といふ言葉の意味は、元来「好く」「好む」といふ意味のほかに、「苦しむ、なやむ」といふ意味があり、それが重つて、「修業する」「わざを学ぶ」「道にいそしむ」「磨き飾る」といふやうな意味に用ひられて来てゐます。
 従つて、「たしなみ」といふ
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