応へる覚悟と日常の行動は、青年をして、「よき息子、よき娘」たらしめるものでありますが、常に溌剌として意気昂れる風貌挙止は、最も両親を安堵せしめることを忘れてはなりません。それと同時に、謙抑己を持して、苟くも抗弁に類する言辞を弄しないといふことが、青年のいやが上にも頼もしい態度であります。
 時には年長者の無理解といふこともありませう。これを正しい理解に導く手段は、決して抗争ではなくして、むしろ、沈黙の従順、然らずんば、好機を待つといふことであります。両親の譲歩は常に信用の程度に比例するものだからです。
 両親に対する青年の絶対な聴従といふものは、そこに卑屈な陰翳を伴ひさへしなければ、まことに青年自身の品格を高め、一家の貫禄を重からしめるものであります。

 次に、「青年の嗜み」として挙げたいのは、徒らに苦痛を訴へないこと、安逸を希はないことであります。暑い寒いの挨拶も、青年には似合はしくありません。烈風に面《おもて》を曝《さら》して快とするやうなところが多分にあつてほしいのであります。青年は如何に瘠我慢を張つても「痛い」などといふ言葉を口にしないところに、少しも不自然でない、青年らしさ
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