さて、「青年の嗜み」として、特に青年のみに必要なことがらはなんであるかといふと、それはもう、今迄の話でもわかるとほり、別に取り立てゝこれと云はなくても、日本人としての「嗜み」のすべては、青年としても既にこれを身につける準備をはじめてゐなければならぬ、といふことです。
しかし、それにしても、「青年の矜り」なるものが「青年の嗜み」の基礎となる以上、そこにはおのづから、「青年らしい」独自の表現が生れる筈です。
それについて、重要と思はれることを、二三例をあげておきませう。
先づ第一に、家族の一員として、青年男女の占める地位を考へてみませう。多くはまだ両親の膝下にある時代です。なかには父母のいづれかを喪つたものもありませう。しかし、何れにしても、家長またはそれに準ずる親権者の庇護と支配とを受けつゝ或は学業にいそしみ、或は家業を助け、または他の職場に通つてゐるのです。
従つて、これら青年男女の「嗜み」として最も肝要なことは、家族の年長者に対する心遣ひであります。
青年は、「家」の希望であり、光明であり、男子ならば将来を支へる力、女子ならば外に開く花であります。かゝる一家の期待に
前へ
次へ
全67ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング