、青年としての矜りは何かと問はれゝば、それは「若々しい力」だと一口に答へるほかはありませんが、もつと詳しく説明してみませう。
まづ、青年といふものの特質から調べてかゝるのが順序ですけれども、これはあまり専門的な理窟はぬきにして、常識で考へることにします。
年齢から云ふと、大体、十五六歳から二十四五歳までのところを普通青年と呼ぶやうです。私は三十までとしたいのですが、異論のない人はさう思つてゐてもよろしいでせう。
男と女とでは、青年期なるものが多少違ひますけれども、さういふことに関りなく、いはゆる少年の時代を過ぎて、精神的にも肉体的にも、性の自覚をはつきりもちはじめ、世の中を見る眼が多少ひらけ、己の前途について希望や疑ひの起る時代にはひつて行く、これが青年になつた徴候であります。
青年は、例へば、花盛りの時代であります。蕾が綻びて、実を結ぶまで、それは、駘蕩たる春の季節、うらゝかな日光と微風の季節、万物みな歌ひ、天地これに和する季節であります。それはまた、最も盛んなる成長の時期、躍動の時期です。
そして、もちろん、この青春は、永久には続きません。やがて、花の散る如く、青春は去る
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