たいのであります。
[#7字下げ]九[#「九」は中見出し]
家庭の「嗜み」についてはこれくらゐにして、次は、社会生活全般に亘つて、日本人の「嗜み」がどんな形で現れてゐなければならぬかを述べませう。
わかり易いところから、先づ、「身嗜み」について申します。
「身嗜み」は、女に必要であると同時に、男にも必要であることは云ふまでもありません。しかしながら、女の粧ひは、女にとつて一つの精神的労作ともいふべき「生命の表現」でありますから、これを男の場合と同様に片づけることはできますまい。
「女はおのれを好むもののためにかたちづくる」と古人は申しましたが、結局、女の本能は自分を美しくみせるにあるといふぐらゐの意味であらうと思ひます。
それはそれで異論はありませんけれども、そもそも、「美しくみせる」といふ技術と、その技術の根柢をなす真の「女性美」なるものの標準について、現代の女性は、私に云はせると、多少迷つてゐるのではないか、自分のどういふところを活かせば一番美しくみえるか、といふはつきりした目当てがないのではないか、さう思ふのです。
そこから、「女の嗜み」に反する「身嗜み」が平然と行
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