。十六になる甲の家の娘の小さくなつたスェーターを、十四になる乙の家の娘が譲りうける。乙の家の中学を出た男の子の制服が、丙の家の今年中学へはひる丈高のつぽの子に丁度いゝ。かういふ工合にして、消費の節約と物資の活用とを実践してゐる話が私の知つてゐる範囲にあるのです。
生活を秩序だてるといふことは、近頃の言葉で云へば、生活に計画性を与へるとでも云ふのでありませうが、これは、一家の主婦だけの力では、すべての解決は困難でありませう。どうしても、主人の英断と協力が必要になつて来ます。そのうへ、以上の例でもわかるとほり、生活の協同化といふ一つの新しい試みが、十分の用意をもつて企てられなければならないのであります。
最後に、私は、生活上の「秩序」として、すべて「かまける」といふことがないやうに、常に心の余裕、ゆとりをもつことが大切だといふことを附け加へたいのです。余裕とは決して、心の緩みをいふのでもなく、骨惜しみを指すのでもありません。これこそ、家庭生活を味ひあるものとするひとつの要素であるのみならず、この「味ひ」のないところには、「秩序」も真の「秩序」となり得ないといふことを、とくと申しておき
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