ければならないのであります。
 この問題はこれ以上詳しく述べる暇はありませんが、要するに、「家庭」の新しい秩序は、「家」の精神を正しく現代に活かした、家族一人々々の分を弁へた嗜みによつて保たれるわけであります。
 家庭の秩序といふことは、かういふ家族同士の関係のみを指すのではありません。なんと云つてもそれが土台にはなりますけれども、それ以外に、家庭生活の日常の営み方、普通に家事とか家政とか呼ばれてゐる主婦の仕事を中心とした一切の家庭の問題の処理が、如何に秩序立つて行はれてゐるかといふ問題があります。
 この点については、今むしろ各方面で云はれすぎるくらゐ云はれてゐることでありますが、その場合に、これをたゞ、生活の合理化とか、科学化とか、さういふ観点からのみ取りあげ、または、消費生活の規正といふ名で、計画的に生活水準を引下げることが、当面の急務といふ風に喧伝されてゐます。もちろん、その何れも、それだけとしては異議のあらう筈はありません。
 しかしながら、国民の総力を最高度に、しかも、永続的に発揮する態度を備へなければならぬ今日、あまり性急に、ものの一面だけを考へて事を運ぶといふことは、注
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