を必然的に変へて来てゐます。封建時代そのまゝの家族制度、乃至は、その制度の中から生じた弊害までを、今日、無批判に踏襲せよといふやうなことを申すのではありません。
 封建時代に於て、既に日本の「家」の精神はある程度歪められてゐたとも云へるのでありますから、この昭和の聖代に於ては、最も純粋で、美しく、健全な「家」の伝統を、新しい時代の要求に基いて、こゝに描き出して行くといふことがわれわれの務めであります。
 この大事業の基礎となる思想は、申すまでもなく、日本の伝統のなかに燦然とその光輝を放つてゐる「忠孝一如」の思想でありますが、それと同時に、最もここで強調しなければならないのは、「家の子は国の子」といふ、久しく封建的家風の下に葬られてゐた極めて雄大な日本古来の国民的観念であります。
 この二つの基本的な考へ方の上に、現代日本の「家」の秩序が整然と成り立たなければなりません。
 そこからはまた、結婚は単に個人間の問題ではなく、むしろそれ以上に、「家」と「家」との問題であるといふ道理が生れて来ます。そして、最後に、結婚は、国家的にみて相当大きな問題だといふところまで、国民のすべてが考慮を払はな
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