。私は少くともさう信じたいのです。
 では、どうすればこの醜いすがたが改められるか。こゝから改めて行かなければ、すべての改革は不可能だといふ私の見解を少し述べてみませう。
 こゝで前以て断つておかなければならないことは、なるほどそれは根本的な問題かも知れないけれども、今時分そんなことを問題にしてゐては、急場の間に合はないぢやないかといふ人があらうといふことです。
 さういふ考へ方が私はいけないと思ふ。
 錆びついた、ねぢのゆるんだ、歯車のすり切れた機械ならば、どんなことをしてでも、それはそのまゝはふつておいてはならないのです。さういふ機械にかけた製品は、きつとどこかに欠点があるばかりでなく、第一に、いくら油を差しても、いつかは全く運転が利かなくなることは眼に見えてゐます。少くともそのうちには能率も次第に下つて行くでせう。そんなことがあつていゝでせうか。

 さういふわけで、私は、現在の家庭生活の、この根本的な弱点を改める国民的運動がどうあつても必要だと思ふのです。
 それは、何よりも、家庭における「秩序」の確立、或は復活であります。
 前にも云つたやうに、時代の推移は、日本の家族の性格
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