坊主の無礼に対して、「蠅は金冠を選ばず」と云つて、これを相手にしなかつた話を思ひ出してみませう。普通の武士ならば、相手が誰であらうと、身分の卑《ひく》いものであればあるほど、無礼の程は容赦をしなかつた時代であります。武士の自尊心がこれをゆるさないのです。しかし、重成は、若年ながら、人並の自尊心などでなく、ちやんと名将の器としての矜りをもつてゐました。
[#7字下げ]二[#「二」は中見出し]
日本の青年の矜りとはそもそも如何なるものでありませう。
申すまでもなく、それはまづ、世界に比類なき歴史の上に立つて、次の歴史を更に新しく書きつぐべき最も若々しい力としての矜りでなければなりません。
言ひ換へれば、第一に日本国民としての矜り、第二に、現代青年としての矜りが、そこでは一体となつて現れます。日本人ならば誰でももたねばならぬ矜りと、青年のみがもち得る矜りとが、渾然と融合したところに、日本青年男女の輝かしい矜りが生れるのだと思ひます。
日本国民として、われわれは、自ら大いに恃むところがある筈です。
万世一系の皇室を上に戴き、未だ曾て一度も外敵に屈したことがないのみならず、肇国以来
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