の上、例の「もつたいない」といふ神慮にもとる行為とみなされるのであります。
節度を失つた人間が、節度ある生活に立ち戻ることは容易な業ではありません。しかし、そこが、自分を鍛へ直し、真の日本人のすがたにかへる肝腎な道でありまして、この時代に生き、この時代を支へるわれわれの、矜りを以て貫かなければならぬ、光栄ある任務だと信じます。
家庭生活、日常生活の改善については、現に各方面でいろいろ研究もされてをり、参考になる書物もたくさん出てをります。
しかし、日本人の嗜みといふ立場から、序でに少しこの問題に触れてみたいと思ひます。
そもそも「家庭」といふ言葉は――どうもすぐに言葉の詮議になりますが、これはやはり現代の日本語が乱れてゐるからで、一応厳密な意味をきめてかゝらないと、誤解が生じ易いのです――「家庭」といふ言葉は、西洋の、殊に英語の「ホーム」といふ言葉から来たのではないかと思ひますが、それだけに、どこか西洋臭いところが残つてゐて、日本風の家族の概念といくぶん喰ひ違つたところがあるやうです。しかし、事実、日本の家族そのものの概念、実質が、現在では時代と共に遷り変つて来てをります。従
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