な」ものはないからであります。「不嗜み」とは、「嗜み」の反対で、どういふ点からみても、日本人の矜りを傷つけ、日本人の力を削ぎ、日本の理想に遠いものだからであります。
残念なことに、現代の日本人の生活は、ごく少数の例外を除いて、有形無形の別はありますけれども、実にこの「不嗜み」なもので満たされてゐます。
それでは、この「醜い装飾」とはどんなものを指すのか。それをいちいちこゝで数へあげることはできません。また、実際にあたつて判断を下さなければわからないものもあります。それはともかく、「装飾」である以上、それを求めた当人は、きつと「美しい」と思つてゐるに違ひない。そこが面倒なところであります。けれども、これは見る人が見ればすぐにわかるのでありますから、その気になれば解決は容易であります。
それから、「節度」といふものを固く守ることであります。これも、日本人の「嗜み」のひとつでありますが、例へば、食ひ過ぎ、飲み過ぎ、遣ひすぎ、いづれも、「不嗜み」である。といふのは、簡単に云へば、「だらしがない」といふことで、たゞ単に、物質的な不経済を意味するだけではなく、人間の品位を下げることになり、そ
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