りますから、われわれの祖先、特に華美と贅沢とを排し、剛健質実な家風をうち樹てた武家や町家の、特に農家の伝統的な生活のしぶりをこゝで振り返つてみる必要があります。それは厳粛なまでにつゝましく、美しいほどに無駄のない生活です。単純素朴の立派さ、それは、その単純が磨かれたものであり、素朴が鍛へに鍛へられたものだからです。
この厳粛さと美しさがあつてこそ、つゝましさも、無駄のなさも、それは人間生活と云へるのでありまして、そこには、「家」の矜り、名誉が厳然としてあり、その「矜り」が、一家の「嗜み」となつて現れてゐることに注意すべきであります。
かういふ家風は、むろん一朝一夕に成るものではありません。しかし、日本人の生活はこれでなければならないのです。
[#7字下げ]八[#「八」は中見出し]
では、今日のわれわれの家庭に於て、どういふ点が第一に改められなければならないかといふことです。
それをはつきり云ひますと、迂遠なやうですが、一家のものがほんたうに気持をあはせて、家のなかから一切の「醜い装飾」を棄て去るといふことでせう。
故らに、私は、「醜い装飾」と云ひました。これくらゐ「不嗜み
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