の働きは、もともと、われわれの祖先が、あらゆる修業の道において、その本質を究め、精神をつかみ、練りに練つて、生なきものに生命を吹きこむ、あの「道を悟る」といふ悟道、精根の限りを尽すあの「精進」の力に外ならぬのであります。
目下、国民運動として、あらゆる方面から、官民一体の国力増強の策が講ぜられてをります。
まづ生産拡充であります。工場、農村、鉱山等のいはゆる産業戦士に向つて、日々激励の言葉が放たれ、国民全体も亦、その労に酬いる用意をしてゐるのでありますが、この問題を解決する根本は、なんと云つても、能率をあげるための技術の向上と、技術の力を最高度に、しかも永続的に発揮し得る逞しい精力、即ち精神的肉体的の健康と、特にその精力の泉源とも云ふべき希望と光明に満ちた生活のしかた、即ち、秩序と潤ひある日常生活の確立であります。
以上の要素は、なにかといふと、工場や農村で働く人たちが、それぞれの「道」を体得し、自らの「矜り」として、その人にふさはしい一切の「嗜み」を身につければよいのです。
次には、物資の活用、消費の節約、貯蓄の増額であります。
これもまた、一言にして云へば、質素勤倹であ
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