へ方だと思ひます。
「嗜み」といふ言葉の含蓄の深さはこゝからも来るのです。それと同時に、この言葉の重み、鋭さ、いづれも、日本人が、長い歴史を通じて、真に「嗜み」を尊重し、「嗜み」に生きてゐたからでありまして、今日この言葉が、既にその内容と共に忘れられようとしてゐることは、日本のために、まことに悲しむべきことです。
 そして、この「嗜み」こそは、現代の生活のなかにこれを活かせば、もうそれで立派な日本の文化であり、日本の力であり、日本の矜りなのであります。

[#7字下げ]七[#「七」は中見出し]

 さて、それならば、現代の日本人、特に、この未曾有の大試煉の前に立つた日本人として、如何なる「嗜み」を身につけなければならぬかといふ問題です。
 これをもつと端的に云へば、われわれ日本人は、この重大な戦ひを見事に勝ち抜くために、どんな「嗜み」が必要かであります。
 私どもは、まづこれを祖先の道に学ばうと思ひます。なぜなら、われわれ日本人を、生み、育て、力づけるものは、やはり、この国土と歴史をはなれてはないのであります。
 世界の知識と云ひ、外国の長所と云ひ、これを採入れ、消化し、役立たせた、そ
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