、やんごとなくなんおはしける」がのつてゐます。道をたしなまれた結果、いとも気高くなられたといふことで、これは明らかに、深い教養が、品位を高めたといふ解釈であります。また、今物語から、「和歌の道をたしなみて、その名聞こゆる人なり」が出てゐます。これは云ふまでもなく、和歌の研究を積んでといふことです。最後に、謡曲から、「露の命を惜しまずして、最期を清くたしなみ給へ」といふ文句が引いてあります。この使ひ方は面白いと思ひます。「最期を清くたしなむ」とは、最期を立派に飾るといふことでせうが、それが平生の心構へにある、覚悟にあることを含めた言葉として理解しなければなりますまい。
[#7字下げ]六[#「六」は中見出し]
言葉そのものの解釈はこれくらゐにしておきますが、もう少し、「嗜み」といふことについて、具体的な問題を拾つて行きませう。
昔から、「武士の嗜み」といふことを云ひます。これは、武士として、常人と異つた、或は人並以上の、特別の「嗜み」なるものが考へられてゐたわけです。武士の役割を果すために第一に必要な武芸の修得の外に、武士たるの体面を保つ上に欠くことのできない日常の心掛け、言語動
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