齢や実力不相応であること、などでありませう。
 そこへ行くと、青年は、本来「夢」に生きてゐると云つてもよく、たゞ、その「夢」の美しからんことを望めばよいのです。
「夢」の美しさは、日本人としての正しい理想と、青年としての豊かな教養から生れます。そして、何よりも、純真な心を必要とします。世間が「夢のやうな話」と一笑に附するもののうちに、どんな「偉大な夢」がないとは限りません。

[#7字下げ]四[#「四」は中見出し]

 多難にしてまた多幸な日本の将来を想ふとき、私は、今日の青年諸君が、一人々々、美しく、逞しい夢をもつてゐてほしいと思ひます。
 青年の夢は、もとより国家の理想につながらなければならぬ。そして、それは飽くまでも、自分の至誠と情熱とを土台とし、信念にまで高められる「志」となつて、はじめて輝かしい希望の色を帯び、雄大な気宇を生むのです。
「志」を立てるとは、それゆゑ、国民の一人として、男女の別なく、己の進むべき道をはつきり見定めることであるけれども、そこにはおのづから、境遇の制約があり、個人の力量に応じた道の選択があるべきで、そのことは夢の美しさ、逞しさを少しも阻害するものでは
前へ 次へ
全40ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング