でありますし、また、結婚は男女の結合によつて、相愛の誠を示す唯一の形式だからです。
結婚はなるほど、子孫を得るためといふ一つの目的をもつて行はれることは事実でありますが、それにしても、それだけが目的ではなく、また、その目的さへも、相手の選択如何によつて、満足に達成せられるかどうかがきまるのであります。不幸にして子供が得られない場合は已むを得ないとしても、生れた子供の素質と、その成育のしかたとは、かゝつて、「結婚」そのものの意義となるのであります。
「結婚」にも、それゆゑに、大きな「夢」がなければなりません。その「夢」は、恋愛のそれと、美しさに於て異るところはありません。たゞ、「結婚」は、多くは現実の掟に縛られ、その「夢」も、現実の条件によつて破られ易いのであります。
しかしながら、それは、結婚に恋愛の法則をそのまゝ当てはめようとするところから生じる錯誤に基づくものであります。恋愛における対象の「美化作用」は、結婚に於ては、相手の欠点を認容しつゝ、互に長短相補ひ、自他の区別を絶して「家」そのもののうちに融けこむ「同化作用」とならなければなりません。
一心同体の夫婦関係は、恋愛から一
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