かも、相手がこれにふさはしくなければなりません。
最も美しく、健やかな恋愛とは、最も男らしい男と最も女らしい女との、相思ひ、相許し、相誓ふ魂の結合であります。
相愛の男女の作る新しい世界は、ものみな豊かにして、熱と光にあふれ、事すべて希望のしるしとなつて、幸福は常に呼べば応へんとしてゐます。
が、その反面、恋愛は、あらゆる心理的葛藤の根源であり、水面のやうに定かならぬものであります。このことが、当然、恋愛の多面性、特に猟奇的な性質を語つてゐますが、恋愛の多くが、「悩み」であるといふ所以も亦こゝにあるのです。
「恋愛」を「夢」として夢みる青年男女に望みたいことは、決つた相手のあるなしに拘らず、その「夢」が飽くまでも、かくあるべき恋愛のすがたに近いものであること、そして、恋愛は、事実結婚を予想するとは限らないにせよ、やはり、結婚へのひとつの道として、その可能性の上に「夢」そのものが運ばれて行くことであります。
かくあるべき恋愛のすがたは、傑れた文学のみが諸君にこれを教へるでせう。
結婚へのひとつの道として恋愛を夢みることは、次代を背負ふ国民の一人として、恋愛を厳粛に考へるものの義
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