人の家庭では主人が閑の時には細君は台所に入りきりだとか、細君の閑な時には主人は外へ遊びに行くとかいふ場合が多いのではあるまいか。
 かういつたことは極く些細な例ではあるけれども、それらを積み重ねて行くと、現在の日本人の生活法をもつと合理的に、且つ豊かにし得る面が幾らもあると思はれるのである。さうなることによつて、日本国民のエネルギーを一層有効に使ふことも出来るし、生活に疲れたり倦んだりすることも尠くさせ、なほ積極的には生活を楽しむことも覚えさせるであらうと思ふ。私は今後日本人の生活法に関してもつと具体的に研究してみたいと思つてゐる。然しそれがためには徒らに他民族を模倣するのではなく、日本人の特質を伸ばし、日本人の性能に適したものを考へて行くべきことは云ふまでもない。
 話は別のことになるが、最近ハルビンで作家、音楽家、俳優、評論家など芸術家の新しいグループが出来た。その大部分はロシア人であつて、市場としては目下のところ殆どハルビンに限られてゐるから、このまま抛つて置けばその前途は暗澹たるものであつて、彼等も今後どうして仕事を続けて行かうかと悩んでゐる状態である。之を実は日本人の間で保護
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