しようといふことになつて先づグループを作らせたわけであるが第一に、誰がどういふことをやつてゐるかといふことを調査しなければならぬ。それが為には今後日本内地からその方面の専門家を派遣して援助する必要があると思ふ。
またハルビンではロシア人のやつてゐる実に立派な劇団を観た。それはモデルン劇場に出てゐるトムスキイ劇団であつて、主要な俳優は悉く本格的な修業を経てゐるらしく演し物も却々こつたものをやつてゐた。見物は全部ロシア人であつて、これもこのままにして置けば散り/\になつてしまふのは必至であるが、今のうちに保護するやうにすれば一つの名物になるに違ひない。
ハルビンでは極く地味な存在に過ぎなからうが、東京へ連れて来るのもさう手間はとるまいと思はれるし、演し物次第では相当に成功する可能性があると思ふ。レパートリイとしてはロシアのクラシツクは殆どやつてゐるやうである。私の観たのは一つはフランスの“スクリーブ”、もう一つは作者は忘れたがツルゲーネフの喜劇のやうな味のある却々しやれた喜劇で非常な感銘を受け、残念ながら羨ましくさへも思つたのである。
底本:「岸田國士全集25」岩波書店
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