世界人情覗眼鏡
岸田國士

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凡《およそ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)採鉱や[#「や」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
−−

       七

 日本語の研究をしてゐるポリテクニツクの学生を紹介された。採鉱や[#「や」に傍点]金の専攻らしい。青年の家庭には、父君が外国貿易商であるせゐか、いろ/\珍しい人物が出入してゐた。
 お茶の会をするといふので、僕は出かけて行つた。ほんたうをいふと、僕はあまりかういふ場所を好まない。殊にパリへ流れ込んで来てゐる外国人が、容易に出入できるやうな家は、たゞ雑然たるエキゾチズムの刺激があるばかりだ。
 凡《およそ》パリへ行つて、文学芸術の修業を心がけ、アヴアン・ギヤルドの運動に眼をつけてゐたほどの人は、詩人A・Mの「面会日」を知つてゐるはずだ。これまた一寸類のない人種展覧会である。僕がそこで紹介された人だけでも、メキシコの詩人兼雑誌記者、ハンガリーの舞台監督、チエコ・スロヴアキアの文学青年、トルコ
次へ
全4ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング