うするよ。これは君の友情に酬いるたゞ一つの方法だ。君の立場を明かにして、君の周囲のものを安心させてやるよ。
プルウスト  そんなことをする必要が何処にある。今、読み返してみて、多少云ひ足りないところはあると思ふが、全体を通じて、僕の考へは明白に出てゐる。取り消さなければならないところはない。
グランジュ  それや、ほんとかい。
プルウスト  ほんたうだ。
グランジュ  よし。ありがたう…………。

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長い沈黙。
[#ここで字下げ終わり]

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グランジュ  君の健康も、だん/\恢復するやうだし、これからまた、どし/\傑作を書いてくれ。君が、サラ・ベルナアルの年まで生きられるんだと思ふと、我輩は実に愉快だ。そのうちに、アカデミイ・フランセユズで、君は、ジャック・リヴィエエルやアンドレ・ジイドと椅子を並べるだらう。ポオル・モオランも、その次ぐらゐにはひるかな。その頃は、ポオル・クロオデルが君たちの仲間に加つて、仏蘭西大統領に納まるだらう。さうすると、我輩の絵も、お蔭で、肖像博物館に陳列されて、――おや、これは、家にあるジャック
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