ころは、その通りになほつてゐる筈だ。
プルウスト 君の剛情には全く弱るよ。今度ぐらゐ自分の書いたものに不安をもつたことはない。
グランジュ かうして、会つて話をしてからでも、まだ書き直したいか。
プルウスト …………(読みつゞける)
グランジュ 君の仲間にも偉い奴はゐるだらうが、元来、新仏蘭西評論《エヌ・エル・エフ》といふ雑誌は、君がゴンクウル賞を受けるまで、君の書くものを受け附けなかつたんだぜ。その理由は、君が社交界を題材にした小説しか書かないからといふのだ。そのことについて、我輩は「マタン」で、何時か手ひどくあの雑誌を攻撃してやつた。その時の、君の礼状みたいなものを、我輩はまだしまつてある。
プルウスト なるほど、こゝのところは、少しひどすぎたな。
グランジュ (のぞき込み)何処、え、何処…………。
プルウスト (ある個所を示し)言葉が足りないんだな。
グランジュ なに、かまわんさ。我輩は、この次の本で、その序文に対する返答を巻頭につけようと思つてゐる。今日、こゝで云つたやうなことを、みんな書くつもりだ。
プルウスト それはよした方がいゝ。
グランジュ いや、さ
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