は部隊長の後ろにゐたつもりだが、いつの間にかだんだん追ひ越され追ひ越され、つひに話しかけた後ろ姿の対手は人もあらうに例の捕虜であつた。
道がやゝ平らになり、ほつとして足もとをみると、すぐ眼の下を黒々と水が流れてゐる。驚いて一足あとへさがつた。
「大丈夫ですか? お疲れになつたでせう」
今井君らしい声である。そんなにふらふらしてゐるか知らと思ふ。
空がぽつと明るくなつたらしい。眼に冷やりとしたものが感じられる。いま、大きなクリークに沿つた道を歩いてゐるのである。岸に楊柳の並木が立ち並んでゐる。
足の痛みも、喉の渇きも忘れるやうな、ある無感覚の状態にときどきはひる。自分が歩いてゐるのだといふことさへ意識しない瞬間である。
灰色のビルディングが眼に浮ぶ。その前をすうつと通り過ぎてゐるのだなと頭のしんで考へながら、それがどこなのかわからない。美しいその建物のファサアドが、月光を浴びたやうに輝いてゐるのに気がつく。ふと我れにかへる。ビルディングと思つてゐたのは、楊柳の幹の間から、星空を映すクリークの水面であつた。
先頭が止つた。渡し場へ着いたのである。向う岸から女の声で、
「わたし待
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