しなければならないことになつてをり、小川部隊長も、それを知つてゐて護衛をつけるから先に帰れと勧めてくれたのだが、最後まで部隊の行動を見たいと思ひ、そこに踏み止まつた。
その代り、部署をもたない兵隊諸君の溜りへ顔を出して、お互の間に交される雑談に耳を傾け、二三の人々にその日の感想を聞くことが出来た。しかし、改まつた問ひに答へることは彼等には困難とみてとり、私はつとめてさりげなく話を運んだ。
兵隊はみな若くて元気で、その上、生粋の都会児ばかりであつた。
「そしたら、おめえ、鉄兜の縁がぴよこんとへこんでやがんのさ」
「隊長殿が、おれのそばへ寄るな、離れろ離れろつて云はれるぢやねえか。あゝいふ時は、つい間隔のことは忘れて、みんな隊長の方へかたまつて行くだらう。妙なもんだなあ」
「あゝ、腹がすいた。おい、あの豚はどうだ。うまさうでやがら、畜生」
といふあんばいの会話しかいま私の頭には残つてゐないが、この数刻を農家の庭の乾草の山の上で過した印象は、私には決して縁遠いものではなかつた。
軒先に蹲り、外の光を惜み惜み、なにか繕ひものをしてゐた一人の老婆が、その飼豚のちよこちよこと庭先へ出歩くの
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