「あゝ、さうか、あんたの御主人が日本人で、船の会社をやつてゐるんだね」
「いえ、さう、わたし、一と月前にこゝへ来た。またすぐ上海へ帰る。戦争困つたね」
「ふむ、さうすると、あんたの両親の家が此処にあるわけだね」
「わたし、一人、こゝにゐる。誰もゐない。旦那さん死んだ」
「おや、さうか。なんだかわからなくなつた」
今度は私の方が笑ひにまぎらして、この女との会話を打ち切つた。
ほゞ揃つた時分を見計つて、桂班長は、小高い土くれの上に立ち、一同をその前へかたまらせた。五六十名もゐたであらうか? クリークの渡し場附近には、まだ老人達が五六人、素知らぬ顔をして立ち話をしてゐる。
桂班長は、努めて威容を示すといふ態度で徐ろに口を開く。お得意の北京語はこゝでは十分に通じかねるため、傍らにやはり通訳をおき、ところどころ、その通訳が土地の言葉で云ひ直すといふやり方であつた。
予め刷り物にしてある堂々たる宣言文が、ほゞ、そのまゝの形で伝へられるらしく、村民たちは、首をかしげて一語一語に聴き入つてゐる。こゝでもまた意外に活溌な反応をみせる群集の特異な性格をみることができた。が、最もお世辞のいゝ聴き手
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