されたのであつた。
 隊長の後に続いて、手綱を引きしめながら行く。あちこちで犬が一斉に吠えたてる。尖兵が軍工路を右に外れた。乾田のなかの畔道を、本部の一隊は踵を接して進む。道は凹凸がはげしく、その上、ところどころに溝があり、馬は時々足をすべらして乗心地はあまりよくない。
 月が落ちて、暗さが増し、視界はまつたく利かぬと云つてよく、わづかに、前方の森の頂が夜空に浮いてみえる。銃声が二三発聞えた。
「なんでせう、あの光りは?」
 私が瞳をこらすと、誰も答へるものはない。むろん敵の信号である。敵の歩哨線が近いことがわかる。
 クリークに沿つたやゝ広い道に出た。ちよつとした部落である。人が住んでゐるのかゐないのか? 明りの漏れてゐる窓などはひとつもない。こゝで部隊は一時止つた。予め偵察の行はれてゐる渡河点なのである。
 私は隊長の後ろから狭い露地をぬけてクリークの岸へ出てみようとした。
「危いです」
 隊長は私を制した。この瞬間、すぐ目の前に岸から銃声が起つた。
「そこに敵がゐるんですよ」
 しかし、この渡河点は、船の利用ができないために変更しなければならないことになつた。岸に揚げてある船は大
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