は、前にも述べたやうに、自己を以て他を律する癖が双方にあり過ぎて、不必要な感情的摩擦が繰り返されてゐるのではないかといふことである。
血族を同じくする個人と個人との間でも、心から手を握り合ふといふことがさう易々とは行はれないところをみても、民族と民族とが終始一貫友情の固きを示すといふことは、事実、どんなに空想に近いことかは、云ふまでもないことである。しかし、それが東洋平和の根本的基礎であるとすれば、両国民は、是が非でもこの空想を実現させなければならないのではないかと思ふ。
恐らく、この事変の終末に於て、両国の政治的結合がある形に於て達成されるであらう。経済的利害の一致点も発見し得るとみて差支なからう。しかし、それだけの関係なら世界の歴史を通じて、いろいろな時代に、いろいろな国家と国家、民族と民族とが、同盟或はそれ以上の形式のもとに、相倚り相助け合ふ協同の態勢を取つたことが屡々あるのである。しかし、さういふ態勢は、国際間の微妙な動きにつれて、何時崩れないとも限らないのが、これまた歴史の物語るところである。日支間の関係は、さういふ脆弱なものであつてはならないのである。ところが、日支間の
前へ
次へ
全159ページ中143ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング