員はどんな人物かと訊くと、教育局長自身が筆をとつてゐるらしいのである。一例として、国語教科書の草案に桂班長が眼を通した際、ひと処不穏な個所があつたので、局長を問責すると、彼は、自説を固持して譲らなかつたさうである。どういふところを不穏と認めたかといふと、なんでも「中国の現状について」といふやうな標題のもとに、支那の今日他国から侮りを受けるのは、国民のこれこれの欠点、従来の政治のこれこれの悪徳によるので、これを先づ矯正し改革しなければならぬが、そのためには、やはり、範を諸外国にとり、その長を学ぶ必要がある、と説きおこしたところまではいゝが、その次ぎに、文句は正確に覚えてゐないけれども、大体、欧米諸国はその文物制度、悉く完璧の域に達してゐるし、隣邦日本は、最近頓に長足の進歩を遂げ、云々、といふやうな言ひ方がしてある、そこが、桂班長に気に入らなかつたのである。
「どうしても変へないといふんですか?」
と、私はこの純情な愛国者の顔をみた。
「変へないといふんです。その通りだから変へる必要はないといふんです」
「局長といふのは、あの頤髭を生やした老人でせう? 学者なんですか?」
「歴史家ださう
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