支那人研究
岸田國士
私は近頃支那人について語られてゐる文章を読む機会が多いのであるが、やはり永く支那にゐて親しく彼地の人々と接した経験が土台になつてゐるやうな意見には、なかなか傾聴すべきものが多い。
この種の研究や紹介が時に目につくといふのは、私自身、これまであまり支那及び支那人について識ることが少なかつたところから来てゐるが、さういふ気持を多くの日本人が持つてゐるところへ、ヂヤアナリズムが抜目なく一般の要求に応へる記事を絶やさぬやう心掛けてゐるためでもあらう。
支那人に対する正確な認識をもつことは、まことに日本人にとつて刻下の急務に違ひない。支那人が日本人の特質をあまりよく識らぬと同様に、日本人が支那人の心理、風習を深く究めてゐないところから、思はざる様々な誤解が生じ、誤解が積り積つて遂に取返しのつかぬ紛争を捲き超したのだといふ風な考へ方は、まさに時局の一解釈に相違ないのである。
殊に今後の大陸経営、乃至は、両国の親善提携の条件として、この問題が両国識者の間で真面目に取りあげられることは甚だ好ましい傾向だと私はひそかによろこんでゐる次第であるが、さて、前に述べたやうないろ
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