三八年の女性はかく生きよ!
岸田國士
事変が起ると同時に、各婦人団体の活躍が急にめざましくなり、何々婦人会の襷をかけた婦人達が、出征兵士の送迎に慰問に飛び歩いてゐるのは、一応婦人の国家的自覚のあらはれとして結構なことゝいはねばならないが、果して婦人のなすべきことはこれに尽きてゐるだらうか。
今度のやうな大きな事変にぶつつかれば女性も目の前の力に推され、これに適応して行くのは自然なことであるが、今の環境に従ひながらも、将来の成行に対してはつきり眼を開いてゐて貰ひたい。かういふ状態が今後半年一年、或ひはそれ以上も続いたとしたら世の中はどういう風になるか、はつきりいへば社会がどの程度まで文化的後退をするか、これは全部が全部女性の責任ではないが、女性が銃後を護る大きな力である以上、その覚悟如何では、大いに食ひとめることのできる問題だと思ふ、この意味からいつて今年は特に文化的方面での女性の自覚と努力とを期待したい。
直接政治や経済の方面に利害関係を持つのは男性で、実生活もどうしてもその方に引づられることが多い。この男性の弱点とでもいふやうなものを、女性の立場から、独特の微妙なはたらきによ
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