に会ふことであつた。
 ある日のこと、その席上で、新しい演劇雑誌が創刊されること、それにはわが劇壇の錚々たる名士が挙つて同人となり、演劇復興を目指して大いに新風を鼓吹する方針で、その編輯責任に山本氏自身が擬せられてゐるといふ景気のいゝ話が持ち出された。
 なるほど、みんなの顔色でもそれがどんなにセンセイシヨナルなニユースであるかは察しられたが、実は、かういふところが、当時の僕にはぴんと来ないらしく、新しい雑誌といふ意味が、新しい演劇運動といふものにそれほど結びつかない。が、こいつは不思議でもなんでもない。僕は、日本の劇作家が雑誌のなかから生れるといふ重大な事実を知らなかつたのである。

       六

「演劇新潮」はその年の暮に、創刊大正十三年正月号を出した。
 同人として左の人々が名前を連ねてゐる。
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伊原青々園
池田大伍
小山内薫
岡本綺堂
吉井勇
谷崎潤一郎
中村吉蔵
長与善郎
長田秀雄
久保田万太郎
久米正雄
山崎紫紅
山本有三
里見※[#「弓+享」、第3水準1−84−22]
菊池寛
[#ここで字下げ終わり]

 編輯は山本有三氏これに当り、その下に、
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