みたくなつた動機を調べられるだけ調べてみた。で、最後に、作家と俳優とが、フランスではどういふ関係にあるか、俳優は与へられた脚本のテキストを何処まで尊重するか、作者は一字一句も変へさせないか、さういふことを注意してみた。
ところが、意外なことには、劇作の筆を取るほどの文学者は、必ず相当の俳優を友人に持つてをり、自分の作品のプランを先づ話し、書きはじめると、時には一幕づゝ読んで聞かせ批評と忠告を聞き、更に書き改め、時には、合作の程度にまで協力を仰ぎ、いよいよ上演の運びになると、更に、稽古中、様々な修正推敲が行はれるのである。
勿論、駈けだしの作者は、別に相談相手もなく、いきなり書いたものを劇場なり、これと思ふ俳優の手許になり持ち込むこともあるが、その場合、劇場主や俳優は、勝手に注文をつける。作者は、これをさほど侮辱とは考へてゐないやうである。
このことはどういふことかといふと、作者が劇場主や俳優をある程度信用してゐるといふこと、事芝居に関しては、向ふが玄人だと思つてゐること、その玄人には結局触れられない一面で、充分、作者は自分の特色を作品の中に盛り得るものであることを知つてゐるのであ
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