際生活の中に、芝居的なものを最も多く取入れてゐる種類の人間が、今この世の中に居ます。それが、他の人間に比べて、文化的に洗練された種類の人間かどうかといふことは別問題です。何故ならば、さういふ儀式的なもの或は装飾的なものを取入れてゐる取入れ方、或は、取り入れたものの質が、場合によつては、非常に幼稚であり、粗野であり、或は型にはまりすぎてゐる場合には、必ずしも、文化的にレベルが高いといふことは言へないのでありまして、たゞそれが芝居的の要素であるといふことは注目すべきであると思ひます。それを職業的にみて見ますと、先づ裁判官といふものは非常に芝居をするものです。弁護士も同様。その次に、坊さん、もう少し広く云へば、宗教家といつてもよいでせう。それから軍人であります。それにもう一つ附け加へ度いのでありますが、それは学校の教師です。(笑声あり)
自分が役者である、実生活の中で、何か芝居的なことをやつてゐることに堪へられない人間は、所謂自然であらうとします。その自然であらうとすることは何であるかといふと、一つの、固定した文化に対する反抗であります。現在の文化或は、自分の身に付けてゐる文化といふものに
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