の伝説研究について。
二人の愛国の士風の会話。
三時のおやつに蜜柑をやつたら、○に不平をこぼす。因つて、晩に少しばかりお説教をしておく。今の日本人はぎりぎり入用なものだけ、食物なら成長に必要な、生きて行くのに是非必要なものだけで我慢をしなければならないこと。二人ともおとなしく聴いてゐる。
夜、体温七度二分。
チボー家「診察」篇を読みはじめる。
フィリップ博士の素描。
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かういふところへ来ると、私は、彼女の「淋しさ」が「空想の淋しさ」ではなかつたかとさへ思はれるのであるが、それをさうと断言する自信は私にはまだない。
いづれにせよ、彼女は、次第に結婚生活の現実に順応しつゝあつたことは事実であつて、そこに新しい何ものかを発見したかどうか、それがまた彼女の半生をいくぶんでも生き甲斐あるものとしたかどうか、私にはたゞそれについての希望的判断が許されるだけである。
疑ひないことは、公私を通じての私の仕事をよく理解し、常に私を励まし、慰めてくれたこと、主婦としての生活の設計に頭を悩ましながら絶えず細かなことが意の如くならず、日々を重荷の如く引きずつて来たといふこと、母
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