言葉言葉言葉
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)旱《ひでり》が
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)活き/\
−−
――僕はあなた見たいな女が好きですよ。
――さう? あたしも、あなた見たいな男が好き……。
――へえ、それぢや、入れ代つたらよかつたなあ。
かういふ間違ひは、そんなに稀ではない。
頭のてつぺんから――うしろから――額の生え際から声を出す人がある。
日本の役者は妙な処から声を出しますね。――旧劇では頬のあたりから。新派劇では眼と眼の間から。そして、所謂新劇では、はてな、あれはと、耳の上からでしたね。たしか……。
公園のベンチに腰をかけてゐると、一匹の野良犬が、どこからかやつて来て、ベンチの脚に小便をひつかける。
犬は、してしまふと、僕の方をちらと横目で見て、あわてゝ眼をそらす。さうして、気まりが悪るさうに、向うへ行つてしまふ。
「おい、君、君……」
僕はうつかり、さう呼びかけるところだつた。
批評家が、自ら他人に加へた批評を読み返して見て、常にそれが、恰も他人が
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