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微々は、女給の案内で、その一隅に陣取る。ビールを飲みながら、ポケツトの蟇口から、さつきのダイヤを取り出し、女給共に見せる。
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微々 どつちが高いと思ふ?
女給A これ、本物か知ら?
女給B 怪しいわね。
微々 (別の一つを取り出し)ぢや、これは……?
女給A どら、どら……この方が光るわね。
女給B 硝子を切つてみればわかるわ。
女給C かういふのが、却つて瞞されるのよ。わたし、どつちかつて云へば、そつちの方が高いと思ふわ。
微々 (起ち上り)電話……。
女給A (先に立ち)こちら……。
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○電話口。
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微々 (電話帳を繰り)えゝと、トオケウトオキイ株式会社撮影所と……。あつた。(番号を廻し)あ、もし、もし、トオケウトオキイの撮影所ですね。天城更子にちよつと出て貰ひたいんですがね……えゝ、アマギ……サラコ……さうです。僕は兄です。……はい……例の事件で、至急話があるつて云つて下さ
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