ンド万歳」とか云ふ頓狂な掛声。陽気な笑声。
スクリンの天城更子は、「笑はぬ妻」に扮して、「ソルヴエージの歌」の節で、おどけた歌を唱ふ。

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〇三堂微々の家。

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座敷で、三人の客に向ひ、微々が畏まつてゐる。
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客A  手前の方のお願ひは、先生のこれまでに御発表になつた漫画を、全部纏めて出したいのでございますが……。或は、三堂微々漫画傑作集といふやうな題で……。
微々  ちよつと待つて下さい。まだ、こつちのお話をしまひまで伺つてないんですから……。
客B  それで、つまり、東京毎朝の向うを張つてゞすな……。
微々  少し、そいつは考へさして下さい。お引受することはしますが、もつとよく御相談をしてからにしませう。そこで。(客Cに向ひ)あなたは、どういふんでしたつけな。
客C  はあ、さきほども申上げましたやうに、私の方は、何分、読者が花柳界に多いもんでございますから、なるべくは……。
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この時、玄関で、「御免」といふ声。
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