と契約を結ぶことは出来ないとか、会員が自己の経営する劇場で自作を上演する場合の制限とか、(これは興味のある問題で、久しく仏国劇壇を騒がした。結局、劇場創立後三年間は無制限に自作を上演し得るが、その後は、或る割合で、他の劇作家の作品を上演する義務を負ふことになつた)その他、劇作家一般の利権擁護に関して詳細な規定が出来てゐる。
 劇作家協会は、多数劇作家の利権のために少数の劇作家を敵としたこともある。即ち、劇作家にして劇場主たる少数の幸運児を相手取り、前述の義務履行を迫るために訴訟を提起した。弁護士レイモン・ポアンカレは、当時、劇作家協会のために光彩ある弁論を試みた。嘗て代議士ミルランが、議会に於いて、自由劇場の功績を称へて、政府の没理解を攻撃したのと一対の佳談である。そして、日本の名ある政治家に一寸真似なりとして貰ひたい芸当である。
 最近に制作劇場主ルュニェ・ポオを相手取り、元同劇場専属俳優にして劇作家なるジャン・サルマンが、自作の上演権取戻しに関する争議を捲き起し、一時劇壇の注目を惹いた。時節柄、ポオは四面楚歌の声を受けて、たうとう譲歩したやうだが、これも、劇作家協会に加入してゐなか
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