衆の所有に帰するわけであるが、それもなほ、現存作家の利害問題に関すると云ふので、一代議士は、先年、五十年以上を経過した作品と雖も、その上演料(或は印税)は文芸奨励資金として事業家より徴収すべき法律案を提出した。
五十年と云ふ作家遺族の利権は、屡々、論議されたが、その長きに過ぐと云ふ説に反対して、「文学者の子孫は、概して、父祖の精神過労による健康上の影響を受けて、生活能力の微弱なことが統計上示されてゐる。従つて、父祖の恩恵を蒙るべき期間は、他の場合と同一に視てはならない。」と云ふ社会的主張が勝を制したと云はれてゐる。
そこで、上演料に関する現行規定であるが、実際は、各契約に於いて協定されるので、作品の価値、殊に作者の名によつて、更に劇場の性質によつて差異がある。たゞ、あくまでも、一興行収入(純益に非ず)の歩合制度を守つてゐる。その歩合は、八乃至一八パーセントの間を上下してゐる。例へば、ポルト・サンマルタン座は一〇パーセントと云ふ規定であるとすれば、一晩の収入が二万法以下のことはないのだから、二千法になる。一晩三百円なら、そんなに悪くない。
劇場主と作者との契約に於いて、此の歩合を決
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