芸術座の『軍人礼讃』
岸田國士

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(例)「|オボコ娘《アンジエニユ》」

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(例)[#「きらひ」に傍点]
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 脚本について――
 同じショウのものでも、『ウォレン夫人の職業』と『アンドロクレスと獅子』との間には、殆ど一人の作家だけの距りがある。
 然し乍ら、その距りはショウが写実主義を作品の根柢に置くか、或はファンテジイを作の基調とするかによつて自ら生ずる二つの傾向であると云へる。
 そこで此の『軍人礼讃』であるが、これは写実主義の手法と、作者のファンテジイとが相半ばして、いづれを主とも定め難きものであらうと思ふ。そこにまた此の作品の面白味があるのである。
 翻訳は極めて忠実に、而も相当デリケエトな皮肉や諷刺の味を伝へる事に成功して居るやうにも思ふが、またそこまでゆけば翻訳の難事業はまづ十中の八九まで完成されて居ると云はなければならぬが、たゞこゝに問題が生じると云ふのは、事苟くも上演用の脚本に関するからである
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