戯曲集『鴉』の印象
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)論理《ロジツク》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一種の|寛大さ《ジエネロジテ》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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 関口次郎君の第二戯曲集が出た。
 目次に関係なく、作品の出来栄えから、と云ふよりも、寧ろ、僕の好みから本書に収められた九篇の戯曲に等級をつけるとすれば、先づ左の如くであらう。
[#ここから2字下げ]
秋の終り
女優宣伝業

乞食と夢
勝者被勝者
真夜中
彼等の平和

女と男
[#ここで字下げ終わり]

 此の等級のつけ方に、作者は或は不服かも知れぬが、それはそれでいゝのだ。僕は、関口君の特質が最も高く発揮された作品でなければ、寧ろ、彼に幾分欠けてゐるもの、或は、彼が常に求めてゐるものを、勇敢にその中に取り入れ、執拗に之を追ひまわしてゐる作品に多大の興味を惹かれるのである。

『秋の終り』は関口君の云はゞ本領である。そして、その本領たるモーラル・センスの批判が最も清澄な表現に達し、一脈の詩味をさ
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