評家は遂に、彼の母方の祖母がスペイン人であつたといふ事実を指摘するに至つたのだが、これなどは、大手柄である。
何れにしても、故郷をもちながら、その故郷に馴染が薄いといふことは、考へようによつて不幸でもあるが、また、一方からいへばさういふ人間もあつて、その郷土が郷土以上に拡がりを持つことにもなるのである。私が郷里を愛するその愛し方は、恐らく、紀州に生れ、そこに育つた人々のそれとは似ても似つかぬものだらうと思ふが、それはそれでまたなにか紀州の役にたつことがあるかもしれない。(一九三二・一)
底本:「岸田國士全集21」岩波書店
1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「時・処・人」人文書院
1936(昭和11)年11月15日発行
初出:「大阪朝日新聞」
1932(昭和7)年1月16、17日
※初出時の表題は、「紀州人」「文学の地方性――「紀州人」について(二)」
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月20日作成
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