の生命よりも病気により多く関心をもつといふことなんだ。病気は癒した、しかし病人は殺した、といふやうな例もなくはないぜ」
あゝ、豈に医者のみならんや、である。
代理の声
近頃、必要があつて青年のために書かれた啓蒙教訓の書を十数冊集めてみた。何れもごく新しく市場に出たもので、この種の書物が各方面で如何に迎へられてゐるかがわかるのである。
いろいろな立場から、それぞれ当面の問題となる事柄について解説し、指導しようと試みてゐるのであるが、それはそれで相当に目的を達してゐるやうに思はれる。
たゞ、そのなかに、特に専門的な知識を授けるといふやうなものでなく、むしろ、青年を単に自分の後輩、或は後継者とみ、「若き国民」の指導者とでも云ふやうな態度で、その奮起と自覚を促し、専ら青年の国家的使命と新しき世界観などについて、自己の薀蓄を傾けてゐるものがいくつかある。
この種のものを通読して、先づ第一に感じることは、何処かで誰かがもう云つたやうなことばかりだといふことが一つ、第二には、言つてゐることはまことに堂々としてゐるが、ほかの誰かゞ言へば、もつと効果があるであらうに、と思はれる
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