空襲ドラマ
岸田國士
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(例)幻象《イメージ》
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(例)さく[#「さく」に傍点]裂
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先般放送局文芸課長久保田万太郎氏から、ラヂオ放送用の「空襲ドラマ」を書いてみないかと勧められ、少々面喰つたが、いろいろ考へた末、ひとつやつてみようといふ気になつた。
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これは無論、今度の防空演習に因んで、半ば宣伝、半ば余興として考へだされた試みであらうが、僕は、第一に、あらゆる音響効果を使ひ得る何よりの機会だと思ひ、その方面でだんだん興味を感じだしてゐる。
なにしろ、東京の空へ敵の飛行機がやつてくるといふ想像は、これはまあつくとして、いよいよさうなつた場合に、われわれ市民は、どの程度まで「しつかり」してゐられるだらうか。これは甚だ見当がつけにくい。阿鼻叫喚といふやうな「音響効果」は、空襲の惨状を写すに、是非ともなくてはならぬものかどうか。日本国民の名誉のために、果して手心を加ふべきかどうか? 僕は迷つた。
○
次に、敵の飛行機を迎へ撃つわ
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