「むかうさんは?」
「十八ゲーム」
「むかうさんも、お当りにならないな」
「おつと、そこには、お茶碗があつてよ」
「大まわし…………」
「いや、まづ、こつちから…………」
こいつ、きたたい[#「きたたい」はママ]。
「引つ張つた!」
「先玉が帰つて来ない」
うそつけ。
「当りゲーム」
「どうぞ」
「失礼」
なんだ、あの腰つきは。
おきみちやんが、鉛筆をしやぶり出した。
「百ぢや、少しお強かない、この方?」
おきみちやん、察してくれ。
おれも男だ。
おまへは女だ。
おきみちやん、この方は泥棒だよ。
牧場のやうな緑色の羅紗の上を、魂のやうに、白玉と赤玉とが、緩く、速く、思ひ思ひの方角に走つて行く。
電燈がつけば、ぱツと象牙の肌が光る。
おきみちやんが、しびれた股のあたりを撫ではじめる。
水色の襟に囲まれた、その三角の胸が波をうつ。
「もう一度いかゞ」
男と男とは、敵意と友情とをほどよく交へた眼で、さりげなく笑ひ合ふ。
「いざ」
「いざ」
棒を取つて立ち上る。
この槍で、あの胸元を、やツと一と突き。
待て、待て、チヨークがついてない。
「どうぞ」
「
前へ
次へ
全7ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング