共同の目標
岸田國士
日本新劇倶楽部が生れた。率直に云へば、甚だ漠然と生れた形である。しかし、さういふものが生れる必然性はあつたと云へる。非常に易々と生れたことからもさう考へられるし、生れたものに対する一般の期待が、相当大きいといふ事実もこれを証拠立ててゐる。
さて期待をもたれてゐることは事実として、また一方では、その期待に添ふやうな仕事ができるかどうかを危む気配も見えないことはない。
世間はどう見ようと、内部では、即ち倶楽部そのものとしては、自分自身の目標が見定められてゐる限り、期待が大きすぎるといふこともない筈であり、将来の発展如何は、全会員の熱度如何によるものと信じるより外はない。
いふまでもなく、この組織の性質からいつて、何等そこから、先駆的なものが生れる筈はないのである。加盟個人及び団体の特殊な立場を悉く抱擁しつつ、その何れにも偏しない最大公約数的理想の発見に向つて進むのが、この組織の使命である。
「自分の仕事」と「倶楽部の仕事」とを、適度に区別して考へることが必要だと私は思つてゐる。といふ意味は、自分独りでは「自分の仕事」も思ふやうに出来ないといふ利己的な計算は別
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