ておいたはうがいゝといふふうなこと、例へば看板の横文字だとか新しい外来語の意味ぐらゐは解らなければいけないとか、もつと滑稽な例をいふと、女学校などでは、横文字が読めなくては缶詰の使ひ方がわからないとか、甚だ他愛のないことが、しかも公然の理由になつてゐたと思ふ。ところで、この第一、第二の目的は、外国語習得の理由として、かなりハツキリもしてゐるし、また納得もできるけれども、第三のいはゆる常識として――といふ考へは、今後はぜひとも一掃しなければならない。これはまつたく欧米依存の精神の現はれであつて、つまりは日本人の生活の到るところに欧米崇拝、或ひは欧米依存の事実があつたことを物語るものだと言はなければならない。しかも、事実において、中等学校だけの外国語などは殆んどなんの役にも立つてゐないのである。例へば、前述の缶詰の使用法を読みこなせるだけの力でさへ、果して充分についてゐるかどうか、甚だ疑問であらう。したがつて、多くの場合、たゞ英語を習つたといふ安易な自己満足に了つてゐるといふ有様である。
しかし、さうだからと云つて、中等学校卒業者が外国語に対して、まつたく無知であつていゝかといへば、必ず
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